お酒を飲んだ後、水を飲むと楽になるのは本当か

「お酒をたくさん飲んで酔ってしまったら、水を飲めば酔いが楽になる」

こんな話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

実際に飲酒後に水を飲む人は少なくなく、一定の効果があると感じている人が多いようです。

では科学的にはこの現象はどう説明されるのか、酔いのメカニズムから順を追って解説します。

乾杯する人たちのイラスト

アルコールはどのようにして酔いを引き起こすのか

そもそも酔いとは何なのでしょうか。

アルコールを摂取するとまず胃に入り、その後小腸に送られます。

小腸から吸収されたアルコールは血液中に溶け込み、血液によって全身に運ばれます。

血液は体の全身を循環しており、体内のあらゆる場所に運ばれますが、アルコールの含まれる血液が脳に到達すると 脳の神経細胞に作用し、脳の一部の働きを抑制させることで、酔いによるさまざまな変化が引き起こされます。

つまり、酔いの程度は血液中のアルコール濃度と密接に関係しているということです。

酔いが覚めるには何が必要なのか

血液中に入ったアルコールは、そのまま体内に残り続けるわけではありません。

主に肝臓で代謝され、少しずつ体内から取り除かれていきます。

体内に入ったアルコールの大部分は肝臓で代謝されます。

そのため、血中のアルコール濃度が下がる速度には限界があります。

ここが、水を飲んでも酔いそのものがすぐには消えない理由です。

水を飲めば体内の水分は増えます。しかし、水は肝臓のアルコール代謝を急激に速めるものではありません。

つまり、「水を飲んで血液中のアルコールを薄める」という方法で酔いを消すことはできないのです。

水を飲むと酔いが落ち着くのは本当?

ここで最初の疑問である「水を飲むと酔いが落ち着く」という説について考えてみましょう。

この説を信じている人たちの一部は「体内(あるいは血中)のアルコールが水で薄まるイメージ」を持っていると思われます。

なぜ水を飲むと血液中のアルコールが薄まるように感じるのでしょうか。

水を飲むと、胃を通った水は主に小腸から吸収され、血液中に入ります。

ここだけを見ると、「血液に水が加わるのだから、血液中のアルコールも薄まるのではないか」と考えるのは自然です。

しかし、吸収された水は、そのまま血液の中にとどまっているわけではありません。

血液に入った水は血液の流れに乗って全身へ運ばれ、血管の外にある体液にも移動します。

さらに、体内の水分は一つの場所に固定されているものではなく、常に移動しながら全身の状態に合わせて調整されています。

一方、アルコールも血液だけに存在しているわけではありません。

血液中に入ったアルコールは、血液から組織へ移動し、体内の水分に広く分布します。

つまり、飲んだ水がアルコールの入った血液にだけ追加されるわけではないのです。

水もアルコールも、それぞれ体内を移動しながら分布しているため、 「水を飲めば、その分だけ血液中のアルコールが薄まって酔いが覚める」という単純な仕組みではないのです。

では水を飲むことは全く意味がないのでしょうか?

水を飲む男性のイラスト

酔いに対する水の効果

水を飲むことによる最もわかりやすい効果は、水分不足の防止です。

アルコールには利尿作用があるため、飲酒によって尿量が増え、水分不足につながることがあります。

飲酒中に水を飲むことで、過度の水分不足を防止することが期待できます。

ただしそれが二日酔いの防止につながるかというと、話は別です。

「脱水が二日酔いの主因で、水を飲めば改善する」という考えは一般的な説として扱われることが多いですが、 2024年の研究によると、水を飲むことによる二日酔い軽減効果は限定的で、二日酔いと脱水は別々の現象である可能性が示されています。

また、アルコールと水を交互に飲むことで胃の中のアルコール濃度が薄まり、小腸からの吸収が緩やかになることでアルコール濃度のピークを抑制でき、 結果として「急激な酔い」を軽減することができる、という説も耳にすることが多いです。

しかし、2026年にこの考え方を直接検証した研究では、水を加えても呼気エタノール濃度の推移に有意な違いは確認されませんでした。

主観的な二日酔い症状にも有意な改善は認められず、 水を飲むことで酔いや二日酔いが軽くなるという生理学的な効果は、今回の研究では確認されませんでした。

しかし水を飲むことが全くの無意味かというとそうでもありません。

お酒と水を交互に飲むことは、お酒を飲むペースを遅くすることにつながる可能性があります。

お酒を飲むペースは酔いの程度に影響する大きな要因のひとつです。

水を間に挟むことで一度に飲むお酒の量や、一定の時間内に飲む総量が抑えられれば、 結果として酔いの程度や二日酔いを軽減できる可能性があります。

二日酔いでつらそうな女性のイラスト

水だけでは限界もある

以上のように、水が酔いを軽減する効果は、一般に信じられている説とはやや方向性の違うものであることを分かっていただけたでしょうか。

水を飲むことでアルコールが薄まり、それによって酔いや二日酔いが軽くなるという効果は、 少なくとも現時点では、科学的に確認された効果とはいえません。

上述のように行動上の効果はある程度期待できるものの、 体内のアルコールを減少させるのは、依然として肝臓の機能によるものだという点は忘れてはなりません。

飲みすぎて頭が痛い、気持ち悪いというときに何かにすがりたくなる気持ちはよくわかりますが、 水をたくさん飲んだからといって、血液中のアルコールが早くなくなるわけではありません。

普段から飲み過ぎには気をつけ、万が一酔っ払ったときは軽く水分を取ってゆっくり休むというのが基本的な対処になります。

参考情報と注意点

強い吐き気や意識障害などがある場合は、 単なる酔いではなく急性アルコール中毒などの可能性もあります。 無理をせず、 必要に応じて医療機関への相談も検討してください。